技能実習制度の見直しが検討されていることについて思うところ

外国人技能実習制度

外国人技能実習制度が本格的に見直しをすることが検討されていることについて

2022年7月29日、古川法務大臣が記者会見で外国人技能実習制度の本格的な見直しを検討する考えを明らかにしました。
(翌月8月に法務大臣は葉梨康弘氏に変わってます。)

外国人技能実習制度は、外国人研修制度以来何度も改正を重ね、2017年11月には技能実習法という法律が施行され大幅な制度改正をし、今日に至ります。

しかし、国内外からの人権団体より非難を浴びており、技能実習生の失踪や犯罪などの社会問題も起きている状況です。

そして今回、古川法務大臣の発言にあるように、再び外国人技能実習制度の見直しが検討されていることについて、弊社としての考えや意見をまとめてみました。

技能実習制度見直しの前に労働市場の改善を考えるべき

これまでメディアが幾度となく「外国人技能実習生を受入れる事業所の約7割で保冷違反がある。」と報道をしているので、技能実習制度関係者以外でもこの事実を知るところだと思います。

ここで言う法令違反とは小さなものから重大なものまで様々ですが、メディアの報道の仕方からすると制度関係者以外の方は大変なことと捉えるかもしれません。

しかし、小さな違反も違反は違反なので、見過ごしてはいけないことだとも思います。

そんな外国人技能実習制度の現況ですが、弊社は以下の様に考えてます。

外国人技能実習制度の見直しの前に労働市場全体の改善を

外国人技能実習生を受入れる事業所の約7割で法令違反があると言う前に、労働市場全体で同じ割合で法令違反があると考えられる。

法令違反で多いのが、時間外労働の計算方法が間違っているなどの労基法に基づいた賃金計算がされていないことなどの比較的軽微なもの。

重大な違反をしている事業所もあるが、そもそも労働市場全体で、労基法の内容や雇用のあり方を国による周知徹底が不十分であることが原因と思います。

これを改善する方法は、労働者の雇入れを行う事業所全てを対象に雇用ライセンスの取得を必要とすれば良いと考えてます。

雇用ライセンスは、講習受講修了レベルのものでも良いので、是非そうしてもらいたい。
くだらない法令違反やパワハラをはじめとする様々なハラスメント問題も減ることでしょう。

以上の件をYouTube動画に簡単にまとめますので、良かったらご視聴ください。

技能実習生の失踪と借金問題について

外国人技能実習生は、日本へ入国する前に母国で多額な手数料を支払ってきます。

その手数料額は、国や送出機関によってはかなりの多額なものになっています。

手数料が高額な順で言うと、ベトナム、中国、カンボジアが日本円にして70万円くらい(1米ドル110円代の頃で)で、その次にミャンマー、インドネシアという順だと思います。
※ 弊社調べによる

一方、フィリピンに限ってはフィリピン現地の制度において、技能実習生からの手数料聴取を禁止しているので、フィリピン人実習生は多額の借金をして日本に実習に来ることはなく、失踪もフィリピン人実習生ではかなり少なくなっている。

当然と言っては何ですが、その多額な手数料は多くの場合借金をして支払っているという状況です。

そういった多額な借金があるため、技能実習生は実習が継続できなくなる事由が発生すると、帰国ではなく失踪して不法就労って流れになってしまうケースがある。

失踪の原因は多額な借金だけという訳ではないが、失踪の大きな要因になっていることには違いない。

これをどう改善したら良いのか?

監理団体や技能実習生を受入れる事業者(業界用語で実習実施者という)の現場レベルでの解決は難しい。

となると政治の力で解決してもらいたい。

日本と技能実習生の送出し国との間で締結されている二か国間協定の内容を、技能実習生候補者からの多額な手数料徴収を禁止する内容を追記し、締結し直してもらいたい

そうすることで、技能実習生の多額な借金と、それが原因による失踪問題が改善されると思います。

こちらの件に関しても、YouTube動画で簡単にまとめてます。

監理費徴収のお金の流れを変える

 弊社は、技能実習制度を運用する監理団体と技能実習生を雇入れる実習実施者との間の関係性の実態に問題があると捉えています。

 監理団体は、技能実習生を雇入れている実習実施者から監理費を毎月徴収します。
 相場として技能実習生1人あたり3~4万円程度を毎月徴収しているのです。

もう少し言うと、監理団体は人材ビジネス的に技能実習制度を活用し、実習実施者は監理団体にとって大切なお客様になってしまっているという状況であること。

監理団体は適正に技能実習が行われているか、技能実習生の人権が守られているか、実習実施者に対して監督・指導することが最大の任務であり、国から与えられた使命となっています。

ところが、監理団体は実習実施者から毎月監理費を徴収し、その監理費が売上げ的になっていることから、お客様は神様的な関係になってしまっているのです。

そんな関係性の中で監理団体は実習実施者に、監督、指導、時には厳しい指摘などできるでしょうか?

難しいですよね。

ここを何とかしないと、適性な技能実習の実施、技能実習生の人権の保護を監督・指導することは難しくなるのは当たり前の話です。

2017年11月に技能実習法が施行され、外国人技能実習機構が発足して以来は、外国人技能実習機構の抜き打ち監査などによる不正の摘発が行われていることから、旧制度時代から比べると技能実習業界は大分改善はされましたが、まだまだ不十分です。

監理団体と実習実施者の関係がお客様は神様状態のところが多いからです。

これを変えるには、監理費徴収のお金の流れを変えるしかないと考えてます。

弊社が考えている案としては、

実習実施者が毎月監理団体へ支払っている監理費を、外国人技能実習機構が徴収するようにし、予め監理団体が外国人技能実習機構へ届け出ている監理費額を外国人技能実習機構が監理団体へ支払いをするという流れに変えるのです。
監理費徴収の仕方を変えて技能実習制度を改善する

こうすることによって、監理団体は国から与えられた使命を果しやすくなるのではないでしょうか。

この件でもYouTube動画にしてますので、良かったらご視聴ください。

技能実習生のプライバシーの問題

 技能実習生は基本的に技能実習生を雇入れる実習実施者が用意した寮・宿舎で寝泊まりするようになります。

 技能実習制度では、技能実習生の居住に関して規程を設けてます。
 技能実習生1人のプライベートスペースは4.5㎡以上確保してなければならないとしています。

この4.5㎡という数字は畳に直すと約3畳です。

6畳の部屋だったら2名がその部屋で同居が制度上可能ということになります。
2DKのアパートで、2部屋とも6畳の部屋であった場合、その2DKのアパートに4人居住することが許されるのです。

実際、1つの部屋で2人が居住するケースは少なくありません。

ここで実習生の立場になって考えてみましょう。

2DKのアパートに3年間、自分以外の人2~3人と一緒に生活できますか?
ルームメイトと不仲になったらどうしますか?

ルームメイトと不仲になったら、そこで生活すること自体が難しくなりませんか?

そうなんです。
このタコ部屋という生活環境そのものが失踪リスクなんです。
失踪しなくても途中帰国というリスクがあります。

なので、技能実習生の居住スペースは4.5㎡以上ではなくて、特定技能と同じ7.5㎡以上とすることが良いと思います

実習実施者的には、それだとコスト負担が大きくなると言う人もいるでしょう。

でも、タコ部屋3年間っていうのは、どう考えてもよろしくない。

特に最近の実習生はどこの国の実習生も日本の現代っ子と変わりない感じになってます。
昔の研修生とは勝手が違うのです。

技能実習生のプライバシーの確保を確実にすることこも失踪リスクの低減になりますし、技能実習生の人権保護ということにも則した措置になるのではないでしょうか

まとめ

YouTube動画では、技能実習制度の見直しに関して改善してほしいことを3つ申し上げてきましたが、こちらの記事ではもう一つ加えて4つご紹介して参りました。

今回の記事、「技能実習制度の見直しが検討されていることについて思うところ」をまとめ的に要約すると、技能実習制度の見直しをするべき大事なところは以下の4項目になります。

  • 技能実習制度云々の前に、労働市場の健全化をする。雇用をライセンス制にし、労働市場の健全化を図ることで技能実習生を受入れる事業者の法令順守率を高める。
  • 二か国間協定の見直しで、技能実習生の多額な借金問題を解決する。
  • 監理費徴収のお金の流れを変えて、監理団体の監理システムを十分に機能するようにする。
  • 技能実習生のプライバシーを十分な状態で確保できるよう居住するプライベートスペース4.5㎡の規定を7.5㎡に改正し、失踪リスク低減と人権保護を強める。

コンサルタントとして複数の現場に携わり、技能実習制度で見直しをして欲しい事は沢山ありますが、とりあえず上記の4つがもっとも重要と考えています。

さて、法務省、厚労省、外国人技能実習機構はどのように考え、どのように制度改正をしていくのでしょうか?
現場に直接携わる人を有識者として検討部会に入れ、現場の話をまともに聞くのでしょうか?
正直、不安でしかありません。

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